50年ぶりに再会したとき、人は、どんな顔をしたらいいのだろうか。自分はどんな顔を、相手に示したらいいのだろうか。答えは簡単。自然体に決まっている。
わぁ、でっかい、と思わず口に出した。大人になってから、子供のころに親しんだモノに再会すると、あれっ、こんなに小さかったのか、と思うことがよくある。が、大仏様は、でっかかった。そして、やはり、美男であった。美男というのは、初めて見た中学3年生の時の印象ではなく、その後、文章などで知ったことであった。
なぜ、美男なのか。目鼻立ちがくっきりしているからだろう。そのくせ、濃いだけの顔ではない。目が切れ長だ。このあたりの、微妙なバランス。
体は丸っこい。中東諸国では、美男の条件は、太っていることというが、それは満たしている。日本も、昔はそうだった。源氏物語絵巻でも、美男子はみな、太っている。
背中も、丸かった。
20円払って、体内に入った。体内も丸かった。外側がきれいに仕上げらているのと異なり、中は、製作の苦心の跡が、そのまま出ている。この場所に、数百年座り続けてきたパワーを感じる。
この日は、暑いくらいだった。見学者は、この体内のゴツゴツした皮膚に触れ、熱いよう、と言い合っていた。触ってみると、確かに熱かった。太陽の輻射熱を貯めているというより、大仏様の体内から生まれているエネルギーのように感じた。
離れて見ると、やはり、涼しそうなお顔であった。
車椅子に乗ったご婦人が、遠くから、長いこと、じっと大仏様を見ていた。
(続く)