先月、SIGMAがDP3 Merrillを発表した際、「わが意を得たり」と喜んだ。それから1カ月も経たないうちに、SIGMAの別の発表を聞いて、がっかりしてしまった。こちらが、勝手に盛り上がって、勝手に失望しただけなのだが…。
DP3 Merrillは、APS-C判である。レンズは50mmF2.8。換算75mmという画角に期待した。私の常用機材は、SONYのNEX-5に旧型のMF式各種50mmレンズを着けたもの。この換算75mmが極めて使いやすい。もしSIGMAが、DP3 Merrillのレンズを、DP1 merrill、DP2 merrillと同じように単体発売してくれれば、AFで高性能・コンパクトなシステムが組めると期待したのだ。
しかし、今回、SIGMAは「60mmF2.8の単体で出す」と発表した。これだと、APS-Cでは換算90mm、MICRO4/3では120mmになってしまう。
昨年、評判がいいOLYMPUSの45mmF1.8レンズを入手した。換算で90mm。写りは非常に良かったが、この画角にはどうしても、なじめないでいる。
私の計画は狂ってしまった。
「なんで、50mmでないの~」
ふと、気づいた。SIGMAは「単体レンズでなく、DP3 Merrillを買いなさい」と言っているのだ。うーん、SIGMAの罠に落ちてみるか。
1年ほど前、SIGMAがこのシリーズの19mm、30mmを発表した。私は、両レンズを予約して買った。MICRO4/3用は、19mmを1本、30mmを2本、NEX用は30mmを1本買った。
実は当時、気になっていたことがある。このシリーズは、DP1、DP2で使われているレンズとは異なる、ということである。SIGMAの担当者が、何かのインタビューで明かしていた。
なぜ、そんなことをするのか考えてみた。フランジバックの関係だと推理した。単体で発売するには、汎用性を持たせることが必要であり、設計を幾分変えないといけなかったのだろう。
そういう理由で、SIGMAは今回も、単体発売するに際して設計変更を行い、その過程で50mmが60mmになったのだろう。
そこで、ひとつ、疑問が湧いた。そもそも、この50mmと60mmのレンズはどちらが原点(オリジナル)だったか。SIGMAは、カメラメーカーとレンズのサードパーティーという2つの顔を持つ会社だ。この場合は、どっちの顔を優先させたか。
①50mm原点説(DP3 Merrill優先)。DP1は換算28mm、DP2 は45mm。その次はどう見ても90mmでなく75mmだ。
②60mm原点説(他マウント用レンズ優先)。会社としての売り上げを考えれば、レンズのほうが数多く売れるのだから、こちらを優先する。換算75mmより換算90mmのほうが売れる。
私は、①だと思う。SIGMAはこのシリーズに関してはDP1、DP2 、DP3を優先した。そして副産物的に他マウント・ミラーレス機用を作って売ってみたのだろう。
今後、ミラーレス機のシェアは確実に増えていく。SIGMAは、ある時期から、一気にラインナップを充実させるだろう。19mm、30mmは、そういう状況になる以前に、既存品にちょっと手を加えて作った製品を、将来の有望マーケットで試験販売してみたものだ。あるいは、本格販売のまえの無料サンプルみたいなものだった。
SIGMAの発表を聞いて、もうひとつ、がっかりしたことがある。この60mmレンズは、金属鏡筒にして、価格も19mm、30mmより高くする。既存の19mm、30mmも新しい60mmと同様なスタイルにモデルチェンジするという。当然、価格も高くなるだろう。新しいレンズは実物を見ていないが、今のデザインの方が好きだ。
現行の19mm、30mmは今、8000円台で売られている。在庫処分セールである。
このあたりのことは、あまり気にしないで、SIGMAが、ミラーレス用のいいレンズをいっぱい出してくれることを望む。フルサイズ用の50mmF1.4、35mmF1.4くらいのグレードの製品を、一日も早く出して欲しい。
そういうわけで、私は当面、この現状の組み合わせをメインとして、使っていこう。
E-PL3 + SIGMA19mmF2.8
NEX-5N + MF式旧型各種50mmレンズ