「ジャン・ルー・シーフ」だとずっと思っていた。よく見たら「ジャンルー・シーフ」だった。フランスの写真家。10年ほど前に亡くなり、日本でもときどき、写真展が開かれている。
学生時代に、今はないカメラ雑誌『カメラ毎日』で、彼の何枚かの写真が特集された。一目見て参ってしまった。
先日、竹橋の近代美術館に、ジョセフ・クーデルカの写真展を見に行った。そこで、森山大道など数人の内外の写真家の作品が展示されており、その中に、シーフの作品が何枚かあった。初めて本物を見た。それで、シーフ熱が再燃した。
amazonで、シーフの写真集を探した。3000円程度の古本があり、購入寸前までいって、念のため新本を見てみたら、1300円台で、立派なハードカバー・大判の写真集が売られていた。さっそく購入。
印刷を始め、本の出来がよく、私が見たかった作品は全部載っていた。買ってよかった。
上の写真と、下の写真の2枚は、シーフの作品の中で私が一番気に入ったものだ。40年前に見て以降、一度も忘れたことはない。鮮明に覚えていた。特に、下の写真が、一番好きだった。こういうきれいな人と一緒に生活したかった。ホーロー引きのコーヒーカップで、ブラックコーヒーを飲みたかった。
当時の写真好きの若いヤツは、ロバート・キャパとかアンリ・カルティエ・ブレッソンとかにあこがれているのが多かったが、私は断然シーフだった。
この2枚が、私に与えた影響は絶大だった。広角レンズによるモノクロ写真。背景はシンプル。
記憶に間違いがなければ、コーヒーカップの写真は、NIKON FとNIKKORレンズで撮ったものである。当時のカメラ雑誌には、プロの写真家の作品でも、撮影機材が記してあった。シーフは、NIKON FとLEICA M3を併用していた。これらの作品を仔細に見ると、LEICAで撮った写真のほうがピントがキリッとしており、解像度が高かった。NIKONはモッサリした感じだった。
当時も、この写真は、そんなに解像度が高くないように見えた。でも、いや、だからこそ、ザックリした感じが出ているのだと、思った。さんまんえんぐらい出してもいいから、こんなモデルさんを使って、これとそっくりな写真を撮ってみたい、と思った。
それから、このホーロー引きカップの色だが、内側は白ということが分かる。外側はモノクロなので分からないが、推測するに女性のほうは黄色、手前(妄想の中では私のもの)は緑色である。そうに決まっている。