浄蓮寺に向かう山中で、腹が減ってきた。前日は海辺で魚を食したので、やはりこのあたりならそばがいいな、と考えていたら、本当に「手打ちそば」のノボリが目に入った。
店構えは、まさに田舎風。好みだ。中に入ってみると、地元の人が多かった。チラッと、先客が食べているものを点検。「なんて大盛りなんだろう」と思った。誰かが大盛りを食べているのではなく、全てのお客のそばの量が多いのであった。天ぷらそば950円を注文した。
出てきたのを見て、改めて驚いた。東京の一般的なそば店にくらべ、そばは1.5~2倍、天ぷらは2~3倍の量だ。上の写真では、割り箸の長さが短く見えるが、これはザルが大きいのでそう見えるだけ。そばちょこはビールのジョッキくらい大きかった。
味は悪くなかった。でも、量の多さが印象深く、味わって食うという気になれなかった。何を考えていたかというと、残すのはもったいない、勢いで呑み込まないと完食は無理、などと思っていたのである。
他の客は、天ぷらを半分以上残している。会計時に店の人がプラスチックケースを用意してくれ、それに入れて持ち帰っていた。そういえば、私の故郷の群馬の田舎でも昔そうだったが、結婚式とかちょっとした会合でも、料理のかなりは食べずに、持ち帰っていた。
なんとかがんばって、そばは完食した。天ぷらは半分しか食べられなかった。
ざるに盛られたそばを見ていたら、はて、どこかで見たことがある、と感じた。前日、笠間の陶器市で見た土面だった。陶器市に出品している作家が一品づつ、オリジナルの土面を作り、オークションにかけるのである。そのうちの1つの土面の髪が、そばみたいなのだ。
かさま観光大使のきれいな人が、会場を回って品物を見せている間、オークションの司会者が「さあ、この土面の髪を見て下さい。1本1本極めて丁寧に作ってあります」と声を張り上げていた。
写真をクリックすると、髪の細部が分かる。作家の腕は相当高い。私は、本物のそば、あるいは中華めんを張り付けて焼いたのかと一瞬思ったほどだ。落札価格は5000円くらいで、平均的な価格だったと記憶している。
注文してから、そばが出てくるまでに、かなり時間がかかりそうだったので、お店の人にことわって近所を散策した。3、4軒の民家があって、みんな庭がきれいに手入れされていた。